リーダーシップは先天的なものではなく
後天的に開発できるものである
――その一方、学生にリーダーシップ教育をする際の課題はあるのでしょうか。
岩城 企業に向けたプレゼンテーションは学生にとっては輝かしい成果発表であり1つのハイライトですが、その後、授業の最後の2週間が振り返り期間となります。
実はこの2回の授業こそが一番大事であり、自分の行動がチームにどう貢献し、自分の意図通りだったのか、あるいはどう異なったのか。個人だけでなく、チームとしても振り返り課題点と同時によかった点も丁寧に共有していきます。全ての活動の学びを収穫する期間なわけですが、他科目との兼ね合いやモチベーションが次第に下がってしまい、最後の2回の授業に集中できない学生もいます。
松岡 確かにビジネスコンテストとして勝ちにこだわるほど燃え尽きてしまう場合があります。私の経験からすれば、そうなると学びが止まってしまう。逆に負けてしまったが、それを学びに活かすチームは年次が上がるほど力を発揮していくメンバーが多くなっていきます。
株式会社ITコミュニケーションズ 執行役員 ビジネスデザイン本部 本部長 松岡秀昌。BtoBマーケティング支援一筋10年以上。セールス並びに、マーケティング施策実行支援部門の責任者として組織をリードし、外資系「IT企業」の支援で培ったフルファネル思考で多くの企業のビジネス成長を支援。学生時代は立教大学経営学部で4年間、「権限によらない全員発揮型リーダーシップ」を体系的に学習。現在は社内で「全員発揮型リーダーシップ」の浸透をめざし、産学連携プロジェクトの推進と社内の「全員リーダー」プログラムのプロジェクトリードを担当。学びと実務をつなぎ、挑戦する人を増やすことに力を入れている。
岩城 少し前の世代の話になるかもしれませんが、一般的に企業は新卒採用で体育会出身の学生の成功や失敗の体験からリーダーシップの手がかりを見出してきた一方で、体育会に所属しない学生のリーダーシップにはあまり着目してきませんでした。
体育会に属さない学生も授業内プロジェクトやチーム活動に真摯に取り組み個人とチームで適切に振り返ることで、リーダーシップ開発のサイクルを回すことができると考えています。正解がなかなか見つからない世の中だからこそ、多様な学生たちが社会に出る前にリーダーシップを発揮し振り返り、開発する経験が必要になっているのです。
――新たなリーダーシップ教育を通して、どんな成果が生まれているとお考えですか。
菊地 かつてのリーダーシップは、その人の資質やカリスマ性といった、属人的なものと捉えられがちでした。それが今では、誰もが学べ、様々な「スキル」を伴うものだという理解が多くの学生たちに浸透してきていると感じます。
現代は、他者への配慮から意見やフィードバックを率直に伝えにくい風潮もあります。だからこそ、この授業で学ぶように様々なスキルを身に付け、リーダーシップを発揮できた学生が増えていることは非常に貴重だと思っています。
岩城 リーダーシップを学ぶ前は社会の問題や課題を目の前にして、太刀打ちできない、自信が持てないと語る学生も少なくありませんでした。しかし、授業の中で率直な質問が問題解決につながるといった、小さくてもポジティブな他者に影響をあたえることができるリーダーシップ 体験をすると、知らないことを質問してもいいと思えるようになります。
アルバイト先やサークルの中でも自分から少しずつ質問をしたり、質問を通じた気づきを踏まえて提案するなど日々の実践を繰り返す習慣が身につくようです。ささやかな成功体験が積み重なり最終的には個人の成長実感や具体的なところでは就活にもつながっていくと見ています。
学生 私にとってもチームのメンバーと互いに切磋琢磨しながら、粘り強く課題に取り組み、みんなで振り返り、それぞれのリーダーシップ実践につなげて互いの成長が見えるようになる経験は何よりもわくわくと楽しいものでとても貴重でした。当初は緊張もしましたが、社会人の方も丁寧に寄り添ってくれることで自信がついて、大きな学びにつながったと思っています。