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共立女子大学

産学連携でリーダーシップ教育を推進
共立女子大学とITコミュニケーションズの新たな試みとは?

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リーダーシップは今、従来型のリーダーの権限によってチームが動くものから、権限によらないリーダーシップへ変わろうとしています。

正解がなかなか見つからない世の中で、1人のリーダーに頼るのではなく、チームのメンバーがそれぞれ考え、課題解決に貢献していくことが求められているのです。そうした中、産学連携で新たなリーダーシップ教育を採用する大学が増えています。企業も社員教育に採用するなど相互にメリットのある試みだと捉えられています。

今回は産学連携でリーダーシップ教育を行っている共立女子大学准教授の岩城奈津先生とITコミュニケーションズ専務取締役COOの菊地浩幸、同社執行役員ビジネスデザイン本部長の松岡秀昌が学生も交え、リーダーシップ教育の現状や成果、可能性について語り合いました。

本プログラムは、株式会社イノベスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:松岡 洋佑)がリエゾンとして参画し、株式会社 ITコミュニケーションズと共立女子大学の連携を支援する形で実施された産学協働の教育実践です。

株式会社イノベストは、学生・教職員・知財・インフラ等の学校資源を活性化し生涯学習を支援します。リーダーシップ開発や教育プログラムの設計・推進を担い、大学の渉外担当として社会連携プログラムをコーディネートしています。リーダーシップ開発プログラム実施に興味のある教育関連機関、企業のご相談は株式会社イノベストまでお問い合わせください。 https://www.innovst.com/

なぜ今、マーケターと大学教育にリーダーシップが必要か

 

――なぜ今リーダーシップ教育が必要なのでしょうか。

 

菊地 浩幸(以下、菊地) 私が新しいリーダーシップに接したのは2018年、ある大学で行われた「質問会議」という場でした。社会人が悩みを話し、学生が悩みを解決するための質問を続け、その答えを互いに導き出すというもの。私の悩みは「今どきの若手世代は何を考えているのかよくわからない」というものでした。

しかし、質問を受け続けた結果、「若手が何を考えているのかわからないのではなく、若手に対して私自身がどうコミュニケーションをとればいいのかわからない」のだと認識を改めるようになりました。その体験は非常に印象的でした。この体験から学んだことは、答えは「与えられるもの」ではなく、多様な視点からの「問い」を通じて、共に「見つけていく」ものだ、ということです。

これは、私たちが身を置くデジタルマーケティングの世界そのものだと感じています。デジタルマーケティングは、デジタル技術が進化すればするほど、マーケティング施策も大きく変わります。現場が最新情報を持っており、彼らが発信した情報を組織として有機的に活用してサービスを提供しなければなりません。

こうした時代では産学連携などを通じて新たな視点を取り入れ、現場の力を引き出すリーダーシップを開発していくことが重要ではないかと考えたのです。

 

岩城  奈津(以下、岩城) 本学も前年のトライアル期間を経て2018年度にリーダーシップ教育を正課に導入しました。日本の大学教育では、実は20年ほど前から必要性は議論されており、当時立教大学経営学部の日向野幹也先生が2006年に始めたアクティブラーニングを取り入れたリーダーシップ教育が嚆矢となっています。

1人のリーダーの力で問題解決できる時代は終わり、すべての人がリーダーシップを発揮して問題解決に貢献していくというのはシェアド・リーダーシップの考え方が基本にあるとして、その場合、1人ひとりがどう考え行動すればいいのか。本学では2020年度にビジネス学部を開設するにあたって、学生全員がリーダーシップを身に付けるためには、リーダーシップ教育の必修化が不可欠と考え、PBL(Project Based Learning)の中でチーム活動に取り組みリーダーシップの開発をめざす授業を行っています。

その際、各自のリーダーシップの発揮を振り返るに足る体験をするには、普段の学生生活では経験しないような困難な問題解決のプロセスが効果的でそのためには産学連携が不可欠だと考えたのです。

ITコミュニケーションズ_共立女子大学-2882共立女子大学 ビジネス学部 准教授 リーダーシップ教育センター センター長 岩城 奈津。ビジネス学部設立に参画し、学部の核となるリーダーシップ開発科目の導入と体系化を牽引。現在は全学必修化も推進し、総合大学として学生一人ひとりの個性にあった「自分らしいリーダーシップ」の開発・挑戦から学び合う環境づくりに注力している。「すべての学生がリーダーシップ発揮し、成長する場」を整えることに情熱を注ぐ。

 

松岡 デジタルマーケティングの世界では、提案がなかなか通らない、もし通っても制約があって施策がうまく進まないなど、若手の段階で仕事をすればするほどもめ事が起こってしまう場合があります。

そんな困難をいかに乗り越えていくか。そのとき必要になるのがリーダーシップです。私は大学でリーダーシップ教育を受けていますが、そこでは「不満があれば提案しなさい」ということを学びます。

しかし、今の若手は組織や周囲の環境に不満があっても貯め込んでしまい、急に会社を辞めてしまうことも少なくありません。とくにデジタルマーケティングの世界は理想と現実のギャップが生まれやすい。リーダーシップ教育を学んでいれば、そんな悩みも乗り越えることができるのではないかと考えたのです。

フィードバックしながら互いに気づきを得ていく

 

――現在、共立女子大学とITコミュニケーションズでは共同で「リーダーシップ開発 入門演習」 「リーダーシップ開発 基礎演習」と2つの産学連携授業を行っています。お互いにどのような思いがあったのでしょうか。

 

菊地 この取り組みの最大の価値は「社内研修では絶対に作れない」環境にあると感じています。 社内では、上司・部下といった立場や人間関係が先に立ち、遠慮や忖度が生まれてしまいがちです。

しかし、この授業では改善すべき点を率直にフィードバックしやすいですし、学生のみなさんは悩んでいるからこその真剣な質問をぶつけてきます。こんな授業を通して、学生が変化していく姿や表情を目の当たりにして、私たちも貴重な気づきを得ています。まさに、私たちも学生たちも共に成長できる場だと考えています。

ITコミュニケーションズ_共立女子大学-2922 1ITコミュニケーションズ専務取締役COO 菊地浩幸。ITコミュニケーションズ全社のオペレーションを統括。事業戦略の実行と持続的成長を牽引している。社内向けリーダーシップ教育の責任者として、社内外の垣根を越え、関わるすべての人を巻き込み目的を達成するリーダーの育成を目指す。メンバー一人ひとりの成長を力強く後押しするため、産学連携による研修や実務での挑戦機会の提供など、育成環境の整備に取り組んでいる。

 

岩城 社会人との対話や議論を通じて、学生はより実践的な学びを得るだけでなく、リーダーシップ教育が社会で役立つことを授業を通じて実感することができています。学びながら互いに質の良いフィードバックができる環境はそうそうありません。学生は社会人との接点がまだまだ少なく、相互に意識や行動変容が生み出されるという点でも非常に貴重な場となっています。

 

――共立女子大学ビジネス学部の必修リーダーシップ教育は、1学年約150人を5クラスに分けて行う演習科目だと伺いましたが、具体的にはどのような授業内容でしょうか。

 

岩城 学生たちは前期にリーダーシップの基本から、コミュニケーション、論理的思考、質問、フィードバックなどの基礎的なスキルを学んだうえで、後期からチームに分かれ、プロジェクトに対して提案などを行い、最終的な成果としてプレゼンテーションを行います。授業では1学年上の先輩学生がラーニングアシスタント(LA)となり教員と協働して授業運営やファシリテーションを担うスタイルを採っています。

 

松岡 学生は社員のように課題に取り組む一方、社員は学生のメンターの役割を果たします。もちろん社員は圧倒的な知識がありますが、学生は新たな視点から課題を分析しようとします。授業でのポイントは質問によって行動を促していくこと。互いに刺激を受けながら、相互の視点で多くの気づきを得ることができると感じています。

リーダーシップは先天的なものではなく
後天的に開発できるものである

 

――その一方、学生にリーダーシップ教育をする際の課題はあるのでしょうか。

 

岩城 企業に向けたプレゼンテーションは学生にとっては輝かしい成果発表であり1つのハイライトですが、その後、授業の最後の2週間が振り返り期間となります。

実はこの2回の授業こそが一番大事であり、自分の行動がチームにどう貢献し、自分の意図通りだったのか、あるいはどう異なったのか。個人だけでなく、チームとしても振り返り課題点と同時によかった点も丁寧に共有していきます。全ての活動の学びを収穫する期間なわけですが、他科目との兼ね合いやモチベーションが次第に下がってしまい、最後の2回の授業に集中できない学生もいます。

 

松岡 確かにビジネスコンテストとして勝ちにこだわるほど燃え尽きてしまう場合があります。私の経験からすれば、そうなると学びが止まってしまう。逆に負けてしまったが、それを学びに活かすチームは年次が上がるほど力を発揮していくメンバーが多くなっていきます。

ITコミュニケーションズ_共立女子大学-2830株式会社ITコミュニケーションズ 執行役員 ビジネスデザイン本部 本部長 松岡秀昌。BtoBマーケティング支援一筋10年以上。セールス並びに、マーケティング施策実行支援部門の責任者として組織をリードし、外資系「IT企業」の支援で培ったフルファネル思考で多くの企業のビジネス成長を支援。学生時代は立教大学経営学部で4年間、「権限によらない全員発揮型リーダーシップ」を体系的に学習。現在は社内で「全員発揮型リーダーシップ」の浸透をめざし、産学連携プロジェクトの推進と社内の「全員リーダー」プログラムのプロジェクトリードを担当。学びと実務をつなぎ、挑戦する人を増やすことに力を入れている。

 

岩城 少し前の世代の話になるかもしれませんが、一般的に企業は新卒採用で体育会出身の学生の成功や失敗の体験からリーダーシップの手がかりを見出してきた一方で、体育会に所属しない学生のリーダーシップにはあまり着目してきませんでした。

体育会に属さない学生も授業内プロジェクトやチーム活動に真摯に取り組み個人とチームで適切に振り返ることで、リーダーシップ開発のサイクルを回すことができると考えています。正解がなかなか見つからない世の中だからこそ、多様な学生たちが社会に出る前にリーダーシップを発揮し振り返り、開発する経験が必要になっているのです。

 

――新たなリーダーシップ教育を通して、どんな成果が生まれているとお考えですか。

 

菊地 かつてのリーダーシップは、その人の資質やカリスマ性といった、属人的なものと捉えられがちでした。それが今では、誰もが学べ、様々な「スキル」を伴うものだという理解が多くの学生たちに浸透してきていると感じます。

現代は、他者への配慮から意見やフィードバックを率直に伝えにくい風潮もありますだからこそ、この授業で学ぶように様々なスキルを身に付け、リーダーシップを発揮できた学生が増えていることは非常に貴重だと思っています。

 

岩城 リーダーシップを学ぶ前は社会の問題や課題を目の前にして、太刀打ちできない、自信が持てないと語る学生も少なくありませんでした。しかし、授業の中で率直な質問が問題解決につながるといった、小さくてもポジティブな他者に影響をあたえることができるリーダーシップ 体験をすると、知らないことを質問してもいいと思えるようになります。

アルバイト先やサークルの中でも自分から少しずつ質問をしたり、質問を通じた気づきを踏まえて提案するなど日々の実践を繰り返す習慣が身につくようです。ささやかな成功体験が積み重なり最終的には個人の成長実感や具体的なところでは就活にもつながっていくと見ています。

 

学生 私にとってもチームのメンバーと互いに切磋琢磨しながら、粘り強く課題に取り組み、みんなで振り返り、それぞれのリーダーシップ実践につなげて互いの成長が見えるようになる経験は何よりもわくわくと楽しいものでとても貴重でした。当初は緊張もしましたが、社会人の方も丁寧に寄り添ってくれることで自信がついて、大きな学びにつながったと思っています。

読み、書き、算盤に加えて
リーダーシップは社会のあらゆる分野で不可欠なもの

 

――今後、リーダーシップ教育をどのように発展させていきたいとお考えですか。

 

岩城 共立女子大学・短期大学では今年度から全ての学部・科の1年生が全員「課題解決のためのリーダーシップ入門」(後期)を必修科目として学びます。総合大学として学部・科を超えた全学的な必修科目としての導入は他大にも例がないと思います。リーダーシップ教育が全学でも評価された結果を活かしながら様々な学部・科の先生方と協働して、全員発揮のリーダーシップで「リーダーシップの共立」を体現していきたいと思います。

 

菊地 まず、このリーダーシップ授業で得た経験を当社の社員教育の根幹の一つに取り入れて、社内におけるリーダーシップの浸透を目指したいと考えています。

なぜ、ここまでリーダーシップ教育にこだわるのかというと、日頃の業務でうまくいくプロジェクトには、明確な共通点があるからです。それは、クライアント、協力パートナー、そして私たちが完全に「ワンチーム」となって課題に立ち向かっているときです。理想的な「ワンチーム」はたまたま生まれるのではありません。リーダーシップと様々なスキルによって、意図的にワンチームを作りだせる。私はそこに大きな可能性を感じています。そんな組織になれるよう私たちも努力を続けたいと思っています。

 

松岡 私たちが目指しているのは個人としても、組織としても課題解決能力を向上させることです。リーダーシップ教育を通して、世の中の動きに敏感に対応しながら、自分たちの在り方も変えていきたいと思っています。

 

――最後にメッセージをお願いします。

 

岩城 読み、書き、算盤、それにリーダーシップ。そう言えるほどリーダーシップは学生の皆さんやあらゆる分野で活躍する社会人にも不可欠なものです。リーダーシップは生まれながらに持っているのではなく、開発できるものであることを大学における教育者としても研究者としても証明していきたいと考えています。

 

松岡 世の中の課題解決をしていきたい。そう思いながらも、自分の能力で本当にできるかどうか悩んでいる人も少なくないと思います。ワンチームとなって課題解決していく。今回の取り組みに魅力を感じている方がいれば、ぜひ一緒に学んでみたいし、一緒に仕事をしたいと思っています。

 

菊地 将来的には当社を「リーダーシップの心得」のある組織にしたいと考えています。

そして学生の皆さんには、ここで学んだリーダーシップスキルに自信を持ち、それを存分に発揮して仕事をしてほしい。私たちは皆さんのような人がリーダーとして活躍できる場を用意して待っています。 

ITコミュニケーションズ_共立女子大学-2882(1)岩城 奈津(イワキ ナツ)様

共立女子大学

ビジネス学部 准教授 リーダーシップ教育センター センター長 

ビジネス学部設立に参画し、学部の核となるリーダーシップ開発科目の導入と体系化を牽引。現在は全学必修化も推進し、総合大学として学生一人ひとりの個性にあった「自分らしいリーダーシップ」の開発・挑戦から学び合う環境づくりに注力している。「すべての学生がリーダーシップ発揮し、成長する場」を整えることに情熱を注ぐ。

ITコミュニケーションズ_共立女子大学-2922(1)-1

菊地 浩幸(キクチ ヒロユキ)

株式会社ITコミュニケーションズ

専務取締役COO 

ITコミュニケーションズの全社オペレーションを統括。事業戦略の実行と持続的成長を牽引している。社内向けリーダーシップ教育の責任者として、社内外の垣根を越え、関わるすべての人を巻き込み目的を達成するリーダーの育成を目指す。メンバー一人ひとりの成長を力強く後押しするため、産学連携による研修や実務での挑戦機会の提供など、育成環境の整備に取り組んでいる。

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松岡 秀昌(マツオカ ヒデアキ)

株式会社ITコミュニケーションズ

執行役員 ビジネスデザイン本部 本部長

BtoBマーケティング支援一筋10年以上。セールス並びに、マーケティング施策実行支援部門の責任者として組織をリードし、外資系「IT企業」の支援で培ったフルファネル思考で多くの企業のビジネス成長を支援。学生時代は立教大学経営学部で4年間、「権限によらない全員発揮型リーダーシップ」を体系的に学習。現在は社内で「全員発揮型リーダーシップ」の浸透をめざし、産学連携プロジェクトの推進と社内の「全員リーダー」プログラムのプロジェクトリードを担当。学びと実務をつなぎ、挑戦する人を増やすことに力を入れている。