Vol.1ではBtoBのマーケティングになぜデータベースが必要なのか、概論をまとめました。Vol.2ではマーケティングにおけるデータ活用の観点で、MAツールやCRMツールだけでは不十分なのかまとめていきたいと思います。
案件を1年後に倍にする 顧客ナーチャリングとデータ活用術
コロナウイルスの影響で顧客とのコミュニケーションが減った今、 マーケティングのアクションを中心とした、データ活用が重要になってきています。 本資料では、BtoBマーケティングの強化ポイントやデータ解析によるナーチャリングについてご紹介しています。
MAツールやCRMツールだけでは不十分
MAツール、CRMツール、データベースそれぞれに設計段階で目的の違いがあります。その違いにより、それぞれのツールには得手不得手があります。私がサービス提供する中で、感じたそれぞれの違いをまとめたいと思います。
- MAでは施策ベース、CRMでは案件ベース。人ベースで見るためにはデータベースが必要。
- MAの場合は組んだシナリオを再現、ボトルネックを探す。シナリオ以外のことは苦手
- CRMはあくまでも営業管理ツール。営業の入力精度に左右される。
MAツール
マルケトをはじめとするマーケティングオートメーションツールは、その名も示すようにマーケティングのフローを自動化することを目的とし、設定されたシナリオに対して自動化されたアクションを行うツールです。具体的には、製品・サービス概要と事例と価格ページにアクセスしたユーザーに無料デモをメールで自動的にオファーをし、WEBやセミナーの参加にポイントを付与し、ある一定の点数を超えたユーザーを自動的に営業にパスすることができます。
ユーザーを段階的にわけ、アクション種類や点数のトリガーを設定して、お客様をホットな状態に持っていく、ナーチャリングを行うことに長けています。
データの観点から見ると次のことが言えます。
- メールアドレスベースで企業や個人の最新の情報を保有
- 最新の情報・状況をトリガーにアクションを実施
- 過去の変遷を細かく遡ってアクションするのは苦手
MAツールは基本的にメールアドレスベースでデータを保有します。1つのメールアドレスに対して、企業名や住所、業種、電話番号、住所の情報などの属性情報とメール開封、クリック、WEBアクセスやセミナー参加などの行動情報を保有します。マルケトの場合、アクセスやメールのリンククリックなどのログデータは90日間しか保有することが出来ません。また、アクションの条件設定のために必要なのは、構造化されたデータです。いわゆるExcelの行と列に当てはめられる規則性のあるデータです。
WEBのアクセス「あり」・「なし」
職種が「営業」
会社所在地が「東京」
上記のような、定型データになっていないとアクションの条件設定をすることができません。よく、ありがちなのはセミナーでアンケートを取得しても毎回聞く項目がバラバラ、データ化の精度も悪くMAの条件設定用にインポートしようと思ってもできないということがあります。
MAの基本的な思想は、あらかじめ設定された属性×行動に合わせて、「今」のお客様の状態をもとに、メール配信や広告配信するなどのアクション実行が基本になります。裏を返すと、事前に設定されていなかった過去の行動を遡り、アクションを設定し直すようなことは苦手です。BtoB企業で対象企業が絞られる場合や、構造化されたデータ量が絶対的に少ない場合に適切なアクションを設定できない、などの理由から、取りこぼしが多く、手間がかかるだけでMAは使えないという結論に至るという例がたくさんあります。
実際にあった例ですが、イベントで獲得してきた1,000名分の名刺データを、職種軸「営業」「情報システム部門」でイベント参加者のフォローメールを出し分けるアクションを実行を企画していました。しかし、メール送ろうとしたときにわかったのが、名刺の部署情報が非構造データだったため「営業」や「情報システム部門」に振り分けされておらず、結局全員に同じようなメールを送ることしかできず、MAツールの意味がないといった事象が発生しました。
まとめると、MAツールに保有できるデータは、条件設定されたマーケティングの打ち手ありきのデータです。データは定型の構造データであることが基本で、ログの保有期間にも一定の制限があります。
CRMツール
セールスフォースによって日本でも爆発的に普及したCRMですが、MAはマーケティング向けであったのに対し、営業向けに設計されたツールです。営業訪問、インサイドセールスがいつ行われ、どのような内容のヒアリングをしているか、案件のフェーズはどこで、いくらで、何台のセールス見込みがあるかといった情報管理と次の営業アクションを立てることに活用されています。
データの観点から見ると次のことが言えます。
- 営業訪問履歴、案件の履歴
- データの内容はテキストベースで残される
- 営業ごとの管理方針により、データは一律でない可能性がある
企業ベースで、企業の中に個人を紐付け、個人に対していつ、どのようなアクションを行ったか、どのようなヒアリングが出来ているのかが記録されます。つまり、お客様の生の声が詰まっているデータがCRMには存在しています。CRMへのデータの入力はお客様から入力されるものはなく、営業・インサイドセールスによって情報は入力されます。
データを活用するにあたって次のことは考慮する必要があります。
- データは営業やインサイドセールスの裁量によって入力されていること
- 非構造データの中に重要な情報が詰まっている
CRMには営業が管理されたくない情報は正確に入っていない可能性があります。私がクライアントサポートをするなかで経験したところでは、もともと営業の行動管理のツールであると言う性質上、「確度の浅い案件の情報は営業の性格によって、極端に小規模にするか、極端に大規模にする」、「後で上司から突っ込まれたくないので、ロストした案件の理由を正しく入ない」、「小規模の案件は手間がかかるのでCRMに入れず別管理で勝った場合にのみ入れる」といったことが実際に起こっていました。
また、MAツールと違いCRMは入っている情報をもとにアクションを決めるのは人間のため、重要なデータは非構造データとして入っていることが多いです。例えば、「お客様の製品・サービス検討におけるボトルネックがどこか」、「案件の決裁に至るまでの過程」、「誰が最終決定者なのか」などの重要情報は、営業がヒアリングし、ヒアリングメモとしてテキストがCRM上にそのまま残っている可能性が高いです。
マーケティングのデータ活用という観点で、CRM情報は入力精度が低い可能性があるのでデータ分析した場合でも結果を鵜呑みにしてはいけない。かつ、非構造こデータの中に重要な情報が埋もれている可能性があるということを認識する必要があります。非構造データは分析しにくいデータなので、CRMのデータをどう扱っていくかはマーケターひいては企業全体でデータ活用をする上で向き合うべき重要な課題です。
データベース
ここまでで触れてきたように、MAツールは構造化されたデータ、CRMは重要情報が非構造化されたデータが主に保管されています。それぞれ保有できるデータや種類、形式にばらつきがあり、「あらゆる」データをためることには適しません。データベースはVol.1でも触れましたが、企業情報、個人情報、行動情報、案件情報の4種の構造化・非構造化されたデータ取り続けられ、かつ可変可能な保管箱として機能します。
簡単にデータベースを持つことで広がる、データ活用の幅に関してあげると
- 非構造データを構造化データに変換して活用
- 過去のデータをさかのぼり、セグメンテーション、ターゲティングに活用
- 自社の情報だけでなく、メディアや他企業のデータと合わせた分析・ターゲティング
- アクションやツールを変えやすい
といったことが挙げられます。
上記のデータベースの特徴について後編でさらに詳しく触れたいと思います。
案件を1年後に倍にする 顧客ナーチャリングとデータ活用術
コロナウイルスの影響で顧客とのコミュニケーションが減った今、 マーケティングのアクションを中心とした、データ活用が重要になってきています。 本資料では、BtoBマーケティングの強化ポイントやデータ解析によるナーチャリングについてご紹介しています。