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ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)とは?|BtoBマーケ基礎vol.3

アカウント・ベースド・マーケティング

MARKETER'S NOTE

現在マーケティングにおいて主流となっているのは、見込み顧客(リード)を広く獲得し、多様なアプローチでニーズを刺激して購買に至らせる手法です。アプローチを対象リードの属性に応じて個別化することにより、大量のリードを営業チームに引き渡すことが可能です。

しかし、アプローチを個別化させるといってもそれはリードの役職や行動データなど定量的な情報に基づいたものであり、あくまでも広く開かれた対象への認知度向上が前提になります。対照的に、ABMという完全に一顧客に絞ったマーケティング手法が有効な場合もあります。

ここでは、ABMの基本情報とポイント、具体的な手法に関してご説明します。

ABMとは?

ABMとはAccount Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティン)の略称であり、明確なターゲットとして特定の顧客(アカウント)を選定し、そこへマーケティングや営業リソースを戦略的に集中させる手法を指します。大量の見込み顧客を獲得・育成するリードジェネレーション/ナーチャリングとは対照的といえる手法です。

ターゲットとなる顧客は、取引実績や購買履歴等のデータを基とした収益性に照らして定義されます。

ABMの意義

そもそもなぜ明確にターゲットを絞り込み、リソースを特定の顧客に集中させる必要があるのでしょうか。

ここで重要なのは、ABMのターゲットとするのは「有力な」顧客だという点です。一つのアカウントにリソースを集中させれば、当然他のアカウントのフォローはできず、一見すると収益効率は悪くなるように思われます。しかし、理想的な顧客像を定義し、該当するアカウントへ特化した最適な施策を組めば、幅広い層へ画一的なアプローチをするよりも収益を上げることが可能です。例えば、一社あたりの売上高が他社の100倍になる顧客へは、10倍のリソースを投入しても取り組む価値があるという考え方です。

ABMの意義

主なステップ

STEP1:アカウントの選定

参照可能なデータから顧客に優先順位をつけ、ターゲットとするアカウントを選定します。見込まれる取引額や、平均的な利益幅を上回る可能性以外にも、リピート率や市場での影響度などの戦略的要因も考慮しましょう。

STEP2:キーパーソンの特定

アカウントを選定したら、その組織構造を把握したうえで、最もアプローチすべきキーパーソン、すなわち組織の中で重要な役割を担う人物(意思決定者やインフルエンサー)を特定します。

既に社内にそうした人物とのタッチポイントがないかリサーチし、類するデータの提供を受けるサービスを契約していないか確認しましょう。タッチポイントが無い場合は、営業チームで調査を行うか、社外の専門業者から情報を購入することを検討しましょう。 

STEP3:パーソナライズしたシナリオの作成

ABMにおいて、ここは最も重要なステップです。対象顧客毎に最適なシナリオを考え、それに基づいたアプローチを試みましょう。

大切なのは、コンテンツやクリエイティブそのものをパーソナライズさせることよりも、シナリオ全体をパーソナライズすることです。顧客が真に抱える課題を定義し、自社製品やサービスでの解決手段を提示するコンテンツを制作しましょう。

それに伴った最適なチャネルの選択も不可欠です。業界や企業、想定するキーパーソンによって、効果を発揮するチャネルは異なるからです。

STEP4:キャンペーンの実施

シナリオを作成したら、各々のチャネルでキャンペーンを実施します。特定したキーパーソンへ向けて、パーソナライズコンテンツやメッセージを届けましょう。

バナー広告のパーソナライズ機能など、各チャネルで様々なサービスがありますが、キャンペーンがチャネル間で連動し、一貫したメッセージが伝わるよう意識する必要があります。

STEP5:効果測定・最適化

ABMに限った話ではありませんが、マーケティングは一度実施するのみでは完結しません。

施策後のターゲットのステータスや、メール開封率、CV率など、諸々のキャンペーンの成果を通した効果測定が必要です。現状のキャンペーンの改善点を洗い出し、適宜施策を修正しましょう。場合によってはアカウント選定やシナリオ作成など、さかのぼって仮説検証をする必要もあります。

PDCAのサイクルを可能な限り回し、キャンペーンをより理想的なものに近づけること、これがABMの成功への近道です。

主なステップ

MAツール

ABMは、マーケティングの思想としては非常にシンプルであるものの、いざ実現しようとすると幾つものステップを踏む必要があります。前章でご説明したステップも、厳密にはさらに細かく分かれており、全て人力で完結させるのは現実的ではありません。

古くからの手法であるABMが近年注目を浴びているのは、技術の進歩により、多くの工数をデジタルツールで担うことが可能になったからです。近年は顧客の多くがWEB上で情報収集をするようになり、オンラインでのタッチポイントも急増しています。
ABMでデジタルツールを導入しない手はないでしょう。

特にABMで多く用いられているのが、MAツールです。MAとはMarketing Automation(マーケティング・オートメーション)の略称であり、顧客開拓/育成などのマーケティング活動を可視化・自動化するツールを指します。具体的には、顧客情報の管理、ランク付け、ユーザーアクティビティログの記録・分析、メール配信機能などを備えています。

シナリオ作成などは人間が担う必要がありますが、キャンペーン実施やデータ蓄積など、多くの工数を必要とする手順の自動化が可能です。

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具体例

それでは、ABMの全体のプロセスを具体例とともにご説明します。

あなたはPCメーカーのマーケターであり、企業向けPCのマーケティングを任されました。マーケチームから営業チームへコンスタントにリストを渡していましたが、リストの質が低く、営業では全く活用されていませんでした。
そこでABMを実行し、営業へ渡すリストの質向上を目指すこととなりました。

まずはアカウントを選定します。取引実績や購買履歴を参考に、既存顧客より100社を選定しました。 

次にターゲット顧客のキーパーソンの特定に着手します。選定したアカウントは重要顧客ばかりであったため、既に営業メンバーがキーパーソンを把握しているケースもあり、大多数は営業チームの調査で特定しました。

アカウント・キーパーソンが確定したら、それらにパーソナライズしたシナリオの設計に入ります。ここでも過去の購買履歴や営業チームのヒアリング等により、アカウントが抱える課題の仮説を立てました。ここではアカウントの抱える課題をテレワークの達成によって解決可能だという仮説を立て、テレワークに適したビジネスPCというシナリオのもと、各チャネルにてコンテンツ・クリエイティブを制作しました。

施策が確定したところで、いよいよキャンペーンを実施します。WEB広告はパーソナライズ機能を活用し、配信コンテンツやセミナーの内容もシナリオの方向性に合わせ、キャンペーンの中で一貫性を持たせました。

一度施策を実施したあとも、メール開封率やセミナー参加数など効果測定を行い、改善策を検討しました。修正したキャンペーンも実施⇒効果測定⇒改善⇒…のサイクルを繰り返し、理想のシナリオへ少しずつ近づけていきました。

以上がABMの主な流れになります。

まとめ

ABMは、ターゲットとして特定の顧客を選定し、顧客に特化して設計されたシナリオのもと、アプローチを行っていくマーケティング手法です。大多数の顧客にアプローチするリードジェネレーション/ナーチャリングとは対照的に、狭く深く顧客との関係性を築く手法と言えます。

ABMは、

  1. アカウントの選定
  2. キーパーソンの特定
  3. パーソナライズしたシナリオの作成
  4. キャンペーンの実施
  5. 効果測定・最適化

のプロセスで行われます。

ABMは、単なる一極集中のマーケティングではありません。ターゲットはあくまでも自社にとって「有力な」顧客であり、最適なターゲットの定義、顧客の理解、パーソナライズ・シナリオの構築があって初めて有効な手法です。したがって、実際にキャンペーンを実施するまで、長い工数を要します。
ABMの効率的な運用には、MAツールの導入が有効です。顧客情報を管理し、マーケティングプロセスを自動化するMAツールの登場によって、ABMは近年その意義が認められつつあるという背景もあります。しかし、ABMの全工が自動化可能になるわけではありませんので、人員が求められる領域もしっかりと把握しておくことが大切です。

ABM実践事例

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