産業財(BtoB商材)の購買は、単一の意思決定者ではなく、技術部門、調達部門、経営層など複数の関係者からなる「購買センター(Buying Center)」によって行われます。そこでは、合理的な評価軸だけでなく、組織内の利害関係や影響力、合意形成のプロセスが複雑に絡み合い、意思決定の全体像を捉えることが難しいという課題が存在します。
東京大学の研究チームは、複雑な社会・産業を対象とした「システムデザイン・システム思考」を専門とし、その方法論を海上物流のゼロエミッション化や地方交通サービスといった公共性の高い課題へ適用し、成果を収めてきました。
ITコミュニケーションズは、2007年の設立以来、BtoBマーケティング支援の最前線において、顧客の組織構造や意思決定プロセスを読み解く「洞察力」が成果を左右することを実証してきました。一方で、こうした高度な判断が熟練者の経験や勘に依存し、ノウハウが属人化しやすいという業界共通の課題を深く認識しています。
本講座では、従来のマーケティング・ファネル(※1)や単純で静的なモデルでは捉えきれなかったBtoBの購買意思決定プロセスの複雑性を、システムデザイン・システム思考(※2)の理論に基づく動的モデルとして可視化することを目指します。さらに、熟練したBtoBマーケターが経験的に行ってきた「組織力学の読み解き」や「合意形成の停滞要因の見極め」を工学的・理論的に再現することで、再現性のあるマーケティング介入手法として確立することを目的として本講座を設置することといたしました。
※1 マーケティング・ファネル 消費者が商品を知り、最終的に購入に至るまでのプロセスを、段階ごとに絞り込まれる「漏斗(ファネル)」の形でモデル化したものです。
※2 システム思考 システム思考とは、広義には対象を明示的にシステムとして考えることです。本講座では、システム思考の手法群からシステムズエンジニアリングで利用される記法や概念の整理をBtoBマーケティングの意思決定に導入します。