今回の研究のポイントの一つが、企業やその周辺の関係者を、一つの大きな「システム」として捉えていることです。
例えば、BtoBマーケティングの仕事には、営業部門やマーケティング部門だけが関わっているわけではありません。
顧客企業、製品・サービスを提供する企業、広告代理店、パートナー企業など、さまざまな関係者が存在し、その間で情報やサービス、価値がやり取りされています。
そこで本研究では、システムズエンジニアリング等のステークホルダーの分析で使われるStakeholder Value Network(SVN)という方法を活用しました。
SVNでは価値の交換に注目して、「誰が関わっているのか」「誰と誰の間にどのような関係があるのか」をネットワークとして整理します。
これによって、複雑な企業活動を俯瞰しながら、データ分析によってどこに価値を生み出せるのかを考えやすくします。
生成AIはどこまで企業を理解できる?
今回の研究では、こうした分析を生成AI(LLM)に支援させる仕組みを構築しました。
企業の組織構造などの情報を生成AIに与えることで、
1. どのようなステークホルダーが存在するのかを整理する
2. ステークホルダー同士の関係や価値の流れを可視化する
3. それぞれのステークホルダーが何を求めているのかを整理する
という流れで、企業組織を段階的にモデル化します。
そして、実際のBtoBマーケティング支援企業を対象として、社員の方々へのヒアリングをもとに人が作成したモデルと、生成AIが作成したモデルを比較しました。
その結果、生成AIは、主要なステークホルダーや関係性を幅広く抽出し、人が作成したもの以上に多くの関係性や要求の候補を提示できることがわかりました。
つまり、「考慮すべき関係者や論点を幅広く洗い出す」ことには、生成AIが力を発揮する可能性があるということです。